追悼

  • 2022.01.29

2022年1月27日、埼玉県ふじみ野市で、地域医療のために奮闘し慕われておられた訪問診療医が凶弾に倒れるという、このうえなく痛ましい事件が発生してしまいました。敢えて故人のお名前は伏せさせていただきますが、犠牲となってしまった先生をはじめ、同時に怪我を負われている理学療法士・医療相談員の方、ご家族の皆さま、そして、共に地域で在宅医療・介護を支えているすべての事業者の皆さまへ、心より哀悼の意を表します。在宅医療の一端を担う立場の者として、皆さまが受けた衝撃の大きさ・痛みはいかばかりかと…、心中、お察しいたします。

どのような経緯があったのか。当事者でしかわかり得ないことがあったのだろうと思います。

しかし、たとえどんな背景があったにせよ、犯人が取った行動は断じて許されることではありません。

在宅で過ごされている患者様・ご家族様が、少しでもより良い生活かつその方らしい生活を送ることができるよう、医療・介護・福祉・行政など、様々な分野の方が、文字通り昼夜問わず奮闘しておられるのが在宅医療の現場です。

患者様ご本人の安全な療養を第一に考えるとき、時にはご家族の意向とは異なる方針を医療者として提案しなければならないこともあります。理想と現実、感情が入り混じる中、話し合いを重ね、絶対的な正解は誰にもわからない中から、少しでもご本人・ご家族皆さまがご納得いただける着地点を探していく必要があります。そのために、地域の各事業所の関係者は常にお互いに連絡を取り合って、地域包括ケアシステムの枠組みを維持しながら対応に当たっておられます。

今回の事件をきっかけに、良くも悪くもメディアを通して訪問診療・在宅介護というワードがクローズアップされております。特にメディアの方々へお願いです。今この瞬間も、在宅で奮闘しておられる患者様・ご家族様がたくさんいらっしゃいます。何卒、その方々の心情にも配慮していただければと思います。

また、我々と同じく訪問診療を行っている先生方をはじめ、特に患者様宅へ一人で伺うことも多い訪問看護・訪問介護の分野で働く皆さまも、みな同様に強いショックを受けつつも日々の業務に追われていることと思います。もしニュースを見たり聞いたりするたびに、辛い想いに気持ちを削られている方がいらっしゃいましたら、抱え込まずにぜひ周りの皆さまや我々と共有して下さい。必ず、助けになってくれるはずです。

改めて、今回事件に巻き込まれてしまったすべての方へ、心よりお悔やみ申し上げます。

二度と、こうした痛ましい事件が起きないことを、切に願います。